Q&A一覧
遺産分割
自分が応じたくない遺産分割協議に応じる義務はありませんので、はっきりと、応じるつもりない、ことを伝えましょう。 そして、相手があなたの主張を受け入れるつもりがなければ、あなたのほうから、弁護士への依頼や、調停の利用などを検討するといいでしょう。
特別受益は、遺産の前渡しと評価できることが必要です。そのため、「地代相当額」を主張しても、特別受益とは認められるのは難しいですが、土地に「使用借権」が設定されたと考え、使用借権相当額を特別受益であると主張することは可能です。
使用借権は、弱い権利ですが、他人の建物があることで、土地の価格が目減りします。その目減り分が使用借権の相当額として特別受益により相続人の一人が取得したと評価することは可能です(ただし、そこに親も住んでいた場合は難しいでしょう)。 なお、似たような話で「建物」(例:マンションの一室)の無償使用の場合は、そのような権利はないため、特別受益の主張は難しいとされています。
行方不明の相続人がいる場合,家庭裁判所に行方不明者の財産を管理する「不在者財産管理人」を選任してもらいます。
具体的には、不在者の元の住所を管轄する家庭裁判所に、定められた必要書類(戸籍や住民票など)と不在の事実を証明する資料等を提出します。 「不在者財産管理人」には、通常、弁護士が選任されます。
「不在者財産管理人」は、行方不明の相続人のために遺産分割協議に参加できますので、遺産分割を進めることができるようになります。
遺産分割は、遺産の分割を決める手続です。遺産に預貯金がなければ、不動産の分け方について考えなければなりません。 その際、相続人の一人が、「不動産は全部自分がもらう。他の相続人には代償金を払う」という希望があれば、他の相続人は金銭を取得できますが、誰もそうした希望がない場合には、誰がどの不動産を引き取るのか、ということを決め、各自が取得する不動産の評価に差異がある場合、その評価の差を埋めるための調整金をどうするのか、ということを話し合うことになります。 もし、他の相続人に支払う資金がない、ということでしたら、評価の高くない不動産を取得して、他の相続人から調整金を受け取る方法を検討してみてはどうでしょうか。
ご質問
夫が亡くなりました。夫には,私を受取人とする生命保険金があるのですが,これらも遺産として分割しなければならないのでしょうか。
弁護士の回答
遺産分割の対象となる遺産は,被相続人が死亡時に有していた財産です。
そのため,被相続人が受取人である保険金は被相続人の遺産となりますが,被相続人でない者が受取人である保険金は遺産とはなりません。
したがいまして、ご質問の場合,受け取った保険金は遺産ではありませんので,分割する必要はありません。
なお、相続税が発生する場合、相続人が受取人の保険金も、相続財産とみなされて、相続税の対象になる、と定められています(民法と税法で若干、扱いが異なります)。
相続人全員の合意があれば、遺産分割協議のやり直しは可能です。
もっとも,設例の場合、他の相続人に対して、「担保責任」を求めることもできます(民法911条。担保責任とは、目的物に何らかの欠陥がある場合に生じる責任のことです。)。利用上の制限があることによる損害(利用上の制限があることによる価値減価分)の補填を他の相続人に対し、その相続分に応じて請求することができます。
これは,相続人間の不公平を是正するための制度です。 注意点としては土地に問題があると知った時から1年以内に請求しなければなりません。
調停は調停委員2名の進行で進みますが、審判は裁判官と書記官が担当します(調停委員は出席しません)。
審判では、双方の主張の裏付けとなる証拠を提出したり、裁判官から当事者に質問するなどの方法(審問)で事実の調査が行われます。 1回で終わる場合もあれば、裁判のように長期化(10回程度)続く場合もあります。 裁判官は、事実の調査を基に、遺産をどのように分割すべきか、裁判所としての判断を示します。
遺産分割を放置する、ということは、相続財産の名義がずっと変わらず、誰も相続財産を取得できない、ということになります。
そのうち相続人も亡くなると、相続権は、次の世代に引き継がれますので、時間が経つほど、相続人が増えて、相続関係が複雑になり、皆さんが困ることになります。 そのため、特に遺産分割を急ぐ理由がなくて、相続人と揉めたくない、という場合であっても、遺産分割は放置せずに、相続人の誰が、どの相続財産を引き継ぐのか、という話をしっかりと、しなければなりません。
相続開始後に発生する賃料は、死亡時に存在するものではないので、法律上は、遺産分割の対象ではありませんが(相続人が、法定相続分に応じて、取得するとされています(最判平成17年9月8日))、相続開始後の賃料に取得(精算)も含めて、遺産分割をするのが通常です。
相続人間の対立が大きく、賃料を管理する相続人が精算に応じない、という場合には、他の相続人は、法定相続分に応じた権利を主張し、遺産分割とは別に交渉なり訴訟を起こすことができます。
調停に出席しない場合でも、家庭裁判所はできる限り、欠席された方の意思確認をするように心がけております。
ただし、出席する相続人のほうが関心が高いとみなされますので、基本的に、出席した相続人の希望を尊重する内容で、調停は進行します。
事案によっては、欠席続きだと、遺産を取得する意思がない、とみなされ、何も取得できない、という結果になることもあります。 遠方に住んでいたり、病気療養中であったり、他の相続人と顔を合わせたくない、など、どうしても出席できない事情がある場合には、弁護士が代理人として出席し、あなたの希望や主張を代弁することができます。
ご質問
弁護士の回答
遺留分
相談者の遺留分割合は4分の1のため、単純に計算すれば1250万円になります。
しかし、お父様に借金があれば財産評価は減少しますし、不動産がある場合は評価が問題となります。また、特別受益と評価される生前贈与の有無によって、最終的な金額は変動します。
また、請求された相手かたは、葬儀や供養費用の負担の問題が出される場合もありますので、確実に請求できる金額ではないことをご理解ください。
相続人の一人が相続放棄をした場合、その方は、初めから相続人ではないことになりますので(民法939条)、貴方の遺留分が増える、ことになります。
2019年7月以前に発生した相続の場合、「遺留分減殺請求権を行使した日」からの賃料について請求が可能です(民法1036条)。
ただし、相手が、「価額弁償権」を行使して金銭賠償で解決された場合、相続財産は、最初から全て受遺者に帰属していたという扱いになるので(最判平成4年11月16日)、賃料の請求はできません。 2019年7月以降に発生した相続の場合には、相続開始後の賃料を請求することはできません。
遺留分侵害額請求(以下「遺留分請求」といいます)は、ご自身の遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内に、しなければなりません。これを過ぎると、時効となり、相手に請求ができなくなります。
「亡くなった時」ではありませんので、例えば、相続が発生した2年後に、遺言が発見された・・という場合には、遺言の内容を知ってから1年間、ということになります。
遺言書
一度完成させた遺言書を書き直すことは問題ありません。
新たな遺言書の中に,前に書いた遺言書は撤回するという内容を記載すれば,前に書いた遺言書は無効となります。 ほかにも、前に書いた遺言書を破り捨てれば,前に書いた遺言書は撤回したものとみなされ無効となります。
過去の裁判例では,いったん作成した遺言書に赤色ボールペンで文面全体の左上から右下にかけて斜線を引いた場合も,破り捨てた場合と同様に,その遺言書は撤回したものとみなされ無効となると判断されています。
また,仮に前の遺言書を破棄せずに,新たな遺言書を作成した場合でも,前に書いた遺言の内容のうち新たな遺言書の内容と矛盾抵触する部分については,前の遺言は撤回したものとみなされます。
遺言のご作成をおすすめします。
遺言がない場合,民法の規定に基づき,相続分が決まってしまいますが(本件では兄弟姉妹が相続人となります),遺言を作成しておけば,本来は相続人ではない亡・夫の妹夫婦に財産を残すことができるからです。
ご主人に遺言を作成していただくことをおすすめします。
遺言がない場合,民法の規定に基づき,夫の子2人にも財産が相続されることになりますが,遺言を作成しておけば,遺言に基づき,財産を分けることができます。ただす、夫の子には民法の規定により遺留分が認められているため,夫の子に一切財産を分けない内容の遺言をしたとしても,夫の子が遺留分を請求してきた場合には,夫の子に一定額を金銭で支払う必要はございます。
娘さん以外に相続人がいない場合、民法の規定に基づき、娘さんが当然に相続できますが、娘さん以外にも相続人がいる場合には、「長女に自宅不動産を相続させる」という遺言を作成しておくことで,娘さんに自宅不動産を引き継がせることができます。
要件を満たす遺言は基本的に有効となりますが、複数の遺言の内容が矛盾抵触する場合には,その矛盾抵触する部分について,前に作成された遺言は撤回されたものとみなされ無効となり,後に作成された遺言のみが有効と判断されます。
このように,遺言が複数あると,内容が互いに矛盾抵触していないかについて判断することが必要となり,相続人の間で話がまとまらなければ,遺言の効力をめぐって裁判をすることになってしまいます。 そのため、遺言を複数作成することは,相続人の間に紛争を生じさせる原因になりかねず,あまり望ましいものではありません。 可能であれば、書き直した上で、前の遺言は破棄するのが望ましいです。
ご質問
弁護士の回答
ご質問
父が先月亡くなってすぐ、兄嫁が父の遺言書というものを持ってきました。その内容が私の兄である長男に全て財産を渡すというものでした。しかし父は生前から、遺産は兄と妹(自分)できっかり半分に分けろと言っていました。
また父は亡くなる3年ほどまえから認知症でした。それにも関わらずその遺言書が作られたのは昨年でした。きっと兄嫁が無理やり書かせたに違いありません。このあとどうすればよいでしょうか?
弁護士の回答
遺言の内容を理解し判断する能力がなかった場合には,遺言は無効となります。お父様は3年前から認知症で,遺言が作成されたのが昨年であれば,この遺言能力がなかった可能性があります。
この場合、遺言無効確認の訴え(裁判)を視野に入れて、遺言作成時のお父様の症状を裏付ける資料(病院の診断書など)を収集することが考えられます。
一応、形の整っている、遺言書が存在する以上、それを覆るためには、遺言無効確認請求の訴え(裁判)を起こす方法があります。
遺言無効の要件は、形式面での不備と、遺言者に遺言能力がなかったこと、のいずれかとなります。裁判では主に後者が争われます。 遺言者が認知症などで遺言書の内容を理解せずに作成した場合には、遺言能力がない、ことになります。 そのためには、遺言書の日付の近い時期の診断書や介護認定の資料など、遺言能力が疑わしかったことを証明する資料を集めることから始められると良いと思います。
逆に、遺言書の内容には不満であるものの遺言無効までは争わなくても良い場合には、遺留分の侵害請求が可能です(ただし、ご自身の遺留分が侵害されている場合)。
遺言書(自筆証書遺言)の加筆訂正は,民法に方法が定められており、その方法によらなければ有効となりません。
民法では,遺言書の加筆訂正の方法について,加筆訂正をする場所を指示し,これを加筆訂正した旨を付記して署名し,加筆訂正した場所に印を押さなければならないと定められています。
なお、書き誤った遺言書を破り捨てた上で,新たに作成することでも大丈夫です(破り捨てた遺言は、撤回したものとみなされ無効となります)。
遺言書の内容どおりにしか相続ができない、としても,その後、家族同士で売買や贈与をすれば,容易に遺言書の内容とは異なる遺産の分け方を実現できてしまいますので,遺言書の内容と異なる遺産分割協議を禁止する理由はありません。そのため、相続人全員の同意があれば,始めから、初めから遺言書の内容と異なる遺産分割をすることも認められています。
なお、受遺者や遺言執行者がいれば、それらの者の同意も必要となります。
遺言書には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3種類があります。
自筆証書遺言は,全文,日付,氏名を自署し,押印することで作成できますので,最も簡便な方法といえますが、ご自身で保管する必要があり、また、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言です。作成の際に、本人及び証人の前で読み上げられて内容を確認されます。本人の死後,家庭裁判所での検認は必要なく,遺言書の効力をめぐって後にトラブルとなる事態を避けやすくなります。また,公正証書遺言は公証人役場で半永久的に保存されますので,紛失する心配はありません。
秘密証書遺言は,本人が書いた遺言書を公証人と証人の前で封じ,その封書を公証人役場で半永久的に保存してもらうもので,本人の死後,家庭裁判所での検認が必要になります。秘密証書遺言の利用件数はあまりありません。
以上の3つの方法から選択することになります。3つの遺言の効力に差はありませんが、当事務所では、特段の事情がなければ、公正証書遺言をおすすめしております。
預金の使い込み(使途不明金について)
ご質問
弁護士の回答
ご質問
両親と同居している長男夫婦が両親のお金で海外旅行に年に1回行っているようです。
これは将来相続財産の使い込みで訴えることができますか?
それとも今何かできることがあれば教えてください。
弁護士の回答
長男夫婦が勝手にご両親の資産を使って海外旅行に行っているのであれば,両親は長男夫婦に返還請求をすることができます。
両親が亡くなった後は相続人がその権利を行使できます。
他方で、ご両親が海外旅行費用を長男夫婦に援助(贈与)している場合には「使い込み」にはあたりませんので返還請求はできません。
とはいえ、両親からの贈与額が高額である場合には、生計の資本として贈与を受けたものに該当し、遺産分割において、贈与額が相続財産とみなした上で相続分を算定した後,相続分から贈与額を控除する処理がなされます。
そこで,今できることとしては,長男夫婦が両親から贈与を受けた時期・額を示す資料を集めておくことが重要となります。
そのほか
ご質問
私の家は父が開業医で私も医者になり、その病院を継ぎました。
そして継いでから10年後に病院の大規模なリフォームや医療機器の買い替えを行い、この費用については当時院長であった父と勤務医であった私とで折半しまいた。
先日父が90歳で亡くなりまして、遺産の分け方について親族と話していたところ、病院のリフォーム代金は特別受益であるといわれ、相続財産を大きく減らされそうになっています。
私の相続財産は本当に減らされてしまうのでしょうか?
弁護士の回答
リフォーム代金のうちお父様が支払った分については生計の資本としての贈与(特別受益)に該当するとと考えられます。
したがって,相続財産が減らされることにはなりますが,他方で、お父様の資産の形成に寄与した部分がないか(寄与分)、他の相続人も生前贈与を受けていないか、なども検討されることをおすすめします。
当事務所によくお問い合わせいただく相談内容
この記事の監修者について
アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。022-398-8671