相手が遺留分侵害の請求に応じないときの対応方法

[こんなときはどうすればいいか]

お父様が亡くなり、相続人は、長女(貴方)と長男のお二人です。

貴方は、法定相続分どおりの2分の1の財産を得るつもりでいましたが、突然、「全て長男に相続させる」との遺言書の存在を知らされました。

この遺言書が、故人の意思に基づくものであるならば、貴方が取ることができる選択は、遺留分侵害額請求となります。

そこで、貴方は、インターネットや書籍を参考に作った遺留分侵害額請求の通知書を長男に郵送し、遺留分が支払われるのを待っていればいましたが、一向に支払いがありません。 それどころか、通知書を送ってから、長男に着信拒否され、SMSもブロックされてしまいました。

もうすぐ、お父様の葬儀から1年が経過してしまいます。

 

相手が遺留分の支払いに応じない原因

まず、相手が遺留分の支払いに応じない原因としては、

① 自分の相続できる財産が減るので、支払わないでいいならそれに越したことはない

② 無視していれば相手が諦めてくれるかもしれない

③ 全て自分に相続させてくれた親の意思が蔑ろにされる

④ 請求額が不当に高い

⑤ 遺産が不動産しかなかったので、支払いができない

といったものが考えらます。

 

このうち①から③は、法的に正当な拒否理由とみなされませんが、④と⑤の場合は、支払に応じないことに一定の合理性があります。

 

もっとも、合理的な理由があればきちんと説明すべきであり、無視をするという対応はよろしくないことは言うまでもありません。。

 

無視をされた長女は、弁護士に依頼して、調停や裁判を起こさざるを得ません。

 

そうなると、兄弟間の仲は急速に悪化します。

 

しかし、遺留分の請求自体は法律に認められた権利であるため、それを無視した側に責任があると言わざるを得ないと思います。

 

相手が遺留分侵害額の支払に応じない場合の対処

残念ですが、遺留分侵害額の通知を受け取りながら,支払いを拒否したり、連絡を拒否すること自体には罰則や特別なペナルティはありません。そのため、相手が支払に応じない場合、請求する側(貴方)において、調停や裁判などの手段により、自己の正当な権利の実現を求めることが必要となります。

 

遺留分侵害額請求の調停

遺留分侵害額請求の調停は、相手の住所地の家庭裁判所に申し立てます。

 

現在の制度では、遺留分の請求は、いきなり裁判ではなく、まず調停により解決を図るべきだとされています。調停では、調停委員2名を間に挟んで、話し合い行われます。

 

弊所の経験上、請求を受けた側(相手方)が本人対応をする場合、法的に有効な主張・反論はほとんど出てきません。単に支払いを渋るか、法律上の関連性が薄い弁明を重ねる事が多いです。

 

このような場合は、調停は早めに終了する方向に持っていき、裁判を提起することが効果的となります。

 

遺留分侵害額請求の調停事件で問題になりやすい点

遺留分侵害額請求の調停事件で問題となりやすいのは、

① 不動産の評価額

② 特別受益(生前贈与)

③ 遺産の範囲(特に使途不明金)

の3つです。

 

文字に表すとシンプルですが、紛争類型は様々であり、また、故人に不平等に扱われたことに対する感情的な問題が激しくなることがあります。

 

それでも、弊所の経験上、遺留分の事件のうち8割以上は、交渉もしくは調停で解決しています。交渉や調停で解決をするということは、形式的には双方が納得し、合意により解決ができたことを意味します。

 

ただし、納得のいく内容で合意により解決するためには、相続問題に精通した弁護士の助言、支援が不可欠だと考えます。

 

「あのときの判断は間違っていた・・」と後になって後悔することがないように、遺留分事件の経験豊富な弁護士にご相談いただければと思います。

 

これだけは気をつけること(時効と除斥期間)

遺留分が請求できなくなる2つの制度があります。

 

時効

1つは「時効」です。法律では、「遺留分を侵害された事実を知った時から1年以内」に請求をしないでいると、相手から、時効を主張されてしまいます。

 

「請求」行為は、裁判外でも構いませんが、後から揉めないように内容証明郵便など証拠に残る形で請求してください。

 

除斥期間

次に、遺留分が侵害されていたことを知らずに、相続開始から10年経過した場合にも、遺留分の請求ができなくなります。

 

通常は、相続から10年間近く、遺産分割の話し合いをしていないとおかしいと感じてしかるべきでしが、「10年以上前に発生した相続で実は、遺言があって、他の相続人が全て遺産を取得していたことがわかったのでどうにかしたい」という相談は実際にあります。

 

この場合、相手が法律上の義務は消滅しているけど請求に応じてくれるのであれば良いのですが、普通は、法律上の義務がない場合には支払に応じてもらえません。

 

そのため、長期にわたり手続きがなされていない相続がもしあれば、不動産の登記簿を取得するなどして、相続手続きが行われていないか確認をしたほうがいいといえます。

当事務所の解決事例

遺留分減殺請求において、兄弟間の関係が険悪で、請求にも応じなかったが、裁判で妥当な解決ができた事例
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生前贈与や遺言により遺留分を侵害されていた件について、弁護士が、早期に主張整理や証拠提出を行うことで、早期に調停で和解が成立できた事案
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この記事の監修者について

アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)  

専門分野

相続遺言、交通事故

経歴

秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
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