相手(他の相続人)が弁護士を依頼してきた場合
相手が代理人(弁護士)を依頼した理由は何か
遺産分割協議中に、突然、他の相続人の依頼を受けた弁護士から受任通知(手紙)が届く場合がありますが、どのように対処するのが望ましいかを解説いたします(遺産分割協議を前提としますが、遺留分の事件でも基本的に同じです)。
最初に、相続人が弁護士を依頼する理由を考えましょう。
→ この場合は、手続面の支障を取り除くことを目的として弁護士に依頼した、と考ええられますので、対抗して弁護士を立てる必要は高くありません。
→ この場合は、こちら側も弁護士に依頼したほうがいいのか、を見極める必要があります。
遺産分割は弁護士に依頼しなくても対応可能か
話し合いでも調停でも、弁護士を依頼するかどうかは、各相続人の自由です。
もし、弁護士に依頼をしない理由が、「得られる遺産が少額である場合(弁護士費用のほうが高くなる)」、「双方の希望の開きが小さい場合(弁護士費用よりも多少譲歩したほうが手取りが多くなる)」、「自分が損をすることになっても揉めごとは避けたいと思っている場合」などは、ご自身で対応することも良いと思います。
他方で、「相続分」「分割方法」「生前の引き出し(使途不明金)」「不動産の評価方法」などで深刻な対立があり、相手の主張を受け入れられない(認めたくない)場合、一般に、これらの対立は、話し合いでの解決(=全員が納得すること)が困難であり、交渉自体も難易度が高く、遺産分割調停・審判まで進む可能性が高いです。
その場合、専門家を相手に、主張の裏付けや正当性を逐一、精査して主張・反論することは実際には困難ですし、視点も独りよがりとなってしまい、調停や審判に進んだ場合に、裁判所の理解(共感)が得られないことも多々あります。
また、ご自分の主張が、一方当事者の主観に留まるものか、裏付けのある説得的なものか、交渉や調停の席上において、即時に補足説明や反論ができるのか、などによって、交渉や調停の全体の勝負感も違ってきます。
相手は弁護士を依頼していて、ご自分が弁護士を依頼しない、というのは、それだけでかなり不利な立場を甘受することとなりますので、前記のような特別な理由がなければ、 原則として、こちら側も弁護士に依頼するべき、という結論になります。
なお、弁護士でも、相続問題の経験や理解が不十分であったり、話をあまり聞いてもらえない場合もあります。そのため、相手が弁護士を依頼したから、慌てて弁護士に依頼する、ということではなく、 慎重に、時間を掛けて弁護士を探されることをおすすめいたします。
裁判所から書類が届いた場合(調停を申し立てられた場合)
遺産分割協議での解決が難しい場合、相続人の誰かが、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる場合があります。
遺産分割調停は、一般に相続人同士での話し合いがまとまらないときに、一部の相続人が、他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に「調停申立書」を提出することで開始します。
遺産分割調停では、裁判所が選任する「調停委員」を仲介者として、申立人と相手方が、交互に調停委員と話をする形で、概ね月1回程度の頻度で行われます。
調停委員は、中立の立場、遺産分割協議がまとまるように、関係者の利害を調整したり、必要な資料の提出を求めたりします。
実際に、遺産分割調停を申し立てられてしまった場合ですが、家庭裁判所から、「調停期日の通知書、申立書の写し、進行に関する照会回答書」などの書類がご自宅宛に郵送されてきます。
初回(第1回)の遺産分割調停期日は、申立人の都合で決められますので、都合が合わない場合もあります。
できれば、欠席は避けたいところですので、ご自分が出席できない場合には、弁護士に依頼することで対応が可能となります。ただ、弁護士に依頼するかどうか決断できない場合には、一旦、回答書を裁判所に提出して、初回は出席できないが、2回目以降は出席する意思があることを伝えましょう。
書類の返送がないと、裁判所は、あなたには遺産分割の積極的な希望や言い分がないものと誤解されてしまいますので、ご注意ください(遺産分割調停は、相続人の一部が欠席をしても、開催されます。そして、期日に出席している当事者からだけ話を聞くことになりますので、欠席が続くと、出席している相続人の意向のとおりに遺産分割調停が進む可能性が高まります)。
逆に、調停におて,柔軟に早期の解決を図ることができたり,予想以上に相手方から譲歩を引き出すことができたりする場合もあります。
ところで、もし、遺産分割調停を申し立てられることなど全く予想していなかった場合、遺産分割調停を申し立てられると、まずは「驚き」と、申し立てた相続人に対する、怒りのような感情も芽生えるかもしれません。
しかし、、話し合いがつかない場合に、裁判所を利用することは国民の権利として認められていることで、残念ながら、相談・承諾がない調停の申し立てに対するペナルティはありません。
そこで、相手に対する気持ちは一旦、横に置いた上で、冷静に、ご自分と相手の主張が、第三者からはどう見えるのか、どんな証拠があればいいのか、など、専門家の意見を聞くことが重要です。
決して、裁判所からの書類を無視したり、相手本人に苦情を言いに行ったり、感情で相手の不誠実な点をひたすら述べるのではなく、専門家にご相談ください。
失敗しない弁護士の選び方
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この記事の監修者について
専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。022-398-8671