遺言の解釈を争うことで、遺留分侵害額を2倍以上に増額できた事案

[相続人属性]

相手方:兄弟姉妹

 

主な相続財産
現金・預金、実家、収益不動産

[依頼背景]

ご依頼者の母が先にお亡くなり、その後に父が亡くなりました。相続人は兄弟3人です。

 

ご両親ともに遺言を残していました。母の遺言は、父と長男を優遇するもので、父の遺言は全て長男に相続させる内容です。

 

ところがなぜか父にはほとんど遺産はありませんでした。実は、母の相続のときに遺言でもらえるはずの遺産をもらっていなかったことが判明しました。ただし、遺言の表現がわかりづらく、母の権利の有無が判然としませんでした。また、遺言執行者には、相続人でも法律の専門家でもない人物が指定されていました。

 

[弁護士の関わり]

非常に解釈が難しい事件であり、交渉は意味がないと考え、受任後、速やかに調停を申し立てました。

亡くなった母はどのような権利を誰に対して有していたのか、を特定する必要があるところ、複数の法律構成が選択肢にのぼりました。その中で比較的、理解してもらいやすいと考えた法律構成をメインに、母の遺産の範囲を画定し、遺留分侵害額を算定しました。

 

相手方は、こちらの主張を否定しましたが、当方の主張を全て排斥することは難しいことは明白であり、相手方は法的な視点を持たず、感情的に否定していることがわかりました。

 

そこで、当方から、改めて当方の主張を整理し、かつ、相手方の否認には理由がないことを、わかりやすく説明した書面を提出し、「これをもって弁護士に相談するように」と投げかけました。

 

[結果]

そうすると、次の期日で、相手方は、当方の主張を受け入れるとの態度に転じたため、若干の値引き要請には応じましたが、概ね、当方の希望する額に近い金額で調停を成立させることができました。

 

[担当弁護士の所感、事件解決のポイント]

相続問題は、裁判外の協議 → 調停 → 審判もしくは裁判、という手順で解決に向かっていきますが、事案により裁判外の協議を経ない場合もあります。

 

類型化が難しいのですが、「前提事実に大きな食い違いがある場合」「法的な評価が問題となる場合」などは、話し合いでお互い譲歩することが難しいことが多く、裁判所の調停委員会の斡旋による解決に向かうことが期待できます。

 

 こうした経験に基づく視点と、依頼者の皆様の希望を踏まえ、方針を決めていくこととなります。   

当事務所によくお問い合わせいただく相談内容

この記事の監修者について

アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)  

専門分野

相続遺言、交通事故

経歴

秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
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