遺産分割と裁判

相続(遺産分割)で揉めたら、多くの方は、家庭裁判所の「遺産分割調停(審判)」で問題を解決する、ということはご理解いただいております。

 

しかし、相続問題であっても、家庭裁判所で解決できる問題と、そうでない問題があることはあまり知られておりません。

 

実は、家庭裁判所が終局的に判断できることは、「死亡時にあって、遺産分割時にも存在する遺産」の分割についてであり、それ以外については、原則として、判断ができない、という立て付けになっています。

 

具体的に、遺産分割に関連する問題として、

 

「遺言の有効・無効」

「生前の使い込み」

「死後の引出し」

「・・が遺産に含まれるか否か」

などがありますが、これらは、相続人全員の合意がなければ、家庭裁判所は、考慮しません。

 

その結果、全ての問題が解決するわけではないので、残された問題は、別に、地方裁判所に訴訟提起をすることになります。

 

実際に、いざ、遺産分割調停が始まってから、「あの遺言はおかしい」「使い込みがある」「・・も遺産に含まれるはずだ」という主張をした場合には、必ず、裁判所(調停委員)からは、「それは、訴訟で解決すべき問題ですので、訴訟の結果が出ないと、遺産分割を進めることができません」と言われてしまうことになります。

 

それは、仮に、家庭裁判所で、遺産分割の判断を下したとしても、その後に、地方裁判所で、基となった遺言の有効性が引っくり返されれば、遺産分割をやり直す必要があるからです(つまり、まず、解決すべきは、遺産分割の前提問題から、ということになります)。

 

相続に絡む訴訟として類型的に多いのは、

 

①遺産確認の訴え(被相続人の名義ではないが遺産に含まれる、と訴える訴訟)

②不当利得返還請求(生前に遺産の使い込みがあったとして、相続人の一人を訴える訴訟)

③遺言無効確認の訴え(遺言の要件不備、本人の意思に基づかないので無効だと訴える訴訟)

があります。

 

この他にも、遺産分割で、ある不動産が、相続人の共有にすべきと判断された場合には、地方裁判所で、「共有物分割請求訴訟」をする場合もあります。

なお、前提問題に争いがあるとしても、結果に与える影響が少ない場合には、思い切って、その点はカットして、残りの遺産の分割に焦点を当てるほうが良いケースもあるでしょう。

 

訴訟になった場合、弁護士に依頼をしないというのはかなり不利な立場になります。

 

単に遺産の分け方だけが問題ということでなければ、手続面も含めて、相続問題に詳しい弁護士に相談して、早い段階で見通しを組み立てたほうが、結果的に、良いことが多いと思います。

 

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この記事の監修者について

アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)  

専門分野

相続遺言、交通事故

経歴

秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
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