遺言制度が変わる?

平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(原則、同年7月13日公布)。遺言に関する改正のポイントをご説明します。

 

2019年1月13日から、自筆証書遺言の方式が緩和されます

これまでは、自筆証書遺言を作成する場合、その全文を自書する必要がありました。つまり、自筆証書遺言の一部をパソコンで作成したり、自筆証書遺言に銀行通帳のコピーや登記事項証明書を添付したりすることが一切認められていませんでした。

しかし、これでは、自筆証書遺言に財産目録を付ける場合、これを全て自書しなければならず、自筆証書遺言の作成には多大な手間がかかっていました。

そこで、法改正では、自筆証書遺言のうち、財産目録については、その全てのページに署名押印をすれば、自書する必要がなくなります。

そのため、財産目録をパソコンで作成したり、銀行通帳のコピーや登記事項証明書を財産目録として自筆証書遺言に添付したりすることが可能となります。

 

2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができます。

これまでは、公正証書遺言については、公証役場で保管されていましたが、自筆証書遺言については、そのような制度はありませんでした。そのため、遺言者本人が保管している場合、相続人が遺言書を発見できないリスクや、盗難や紛失、改ざんのリスクがありました。

そこで、法改正では、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになりました(画像データとしても記録されることになります)。これにより、自筆証書遺言の保管場所が明確となり、盗難や紛失、改ざんのリスクがなくなりました。

法務局が保管している間、遺言をした人は、いつでも、これを閲覧することができますし、その保管を途中でやめてもらうことができます。

また、自筆証書遺言を法務局に保管してもらう場合には、遺言書の「検認」(死後に、相続人全員が集まり、遺言書を確認する手続きで、自筆証書遺言の場合は、必須の手続)が不要となるという点も挙げられます。「検認」の申立てをするには、戸籍謄本などの書類を集めなければならず、また管轄の家庭裁判所が遠方である場合もあり、相続人にとって大きな負担となっていました。

以上のように、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえば、紛失や盗難、改ざんのおそれがなくなり、残された家族も遺言書の検認という負担の大きい手続から解放されることになります。

 

以上、①②ともに、遺言を残しやすくなる方向での改正となっており、誰もが当たり前に遺言を残す、「遺言社会」が近づく一歩になると考えられます。

 

 

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この記事の監修者について

アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)  

専門分野

相続遺言、交通事故

経歴

秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
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