遺産分割を放置している方へ
上記のような理由で、相続の手続や遺産分割が止まってしまっているということがおありかと思います。
しかし、この「遺産分割」が終わっていないと、相続手続が終わらせられないことによるデメリットがあります。
また、早期に遺産分割をまとめず、相続手続をしなかったことで、次の相続が発生(つまり遺産分割を放置しているあなたが亡くなったあと)してから、相続トラブルの原因のひとつとなり、「骨肉の争う」と呼ばれるような壮絶な相続争いに発展してしまう可能性もあります。
では、具体的にどのような不利益が発生しうるのでしょうか。
遺産分割を放置していた場合に起こりうる不利益やトラブルについて
1.預貯金の払い戻しを受けられない
故人が亡くなると、銀行などの金融機関の預貯金口座は引き出しができなくなります。これを預貯金口座の凍結といいます。
故人が遺言書を遺していない場合、預貯金口座の凍結を解除し、預貯金を全額払い戻すためには、全ての相続人間で遺産分割について合意がとれている必要があります。
逆に言えば、遺産分割が終わっていないと、故人がもっていた銀行の預貯金を全額払い戻すことができません。
そのため、葬祭費用や相続後の財産の処分、財産の分与ができなくなり、結果的に相続人全員が損を被ることになります。
※なお、令和元年7月1日より、民法改正によって、遺産分割前の預貯金の一部の引き出しが認められることになりました(預金残高×申請人の法定相続分×1/3の範囲)。
2、相続税申告時に、配偶者控除などの税控除特例が使えない
相続税申告の際に、「小規模宅地の特例」のような、一定の特例を用いて相続税額を低く抑える制度がありますが、この特例は対象の財産を誰に相続するのか、どのように分けるかが決まっていないと適用できません。
遺産分割協議が整っていない段階では、「とりあえず法定相続分で相続したもの」と仮定して計算した額で相続税を申告し、金銭による相続税の一括納付を行わなければなりません。
この申告の際に「遺産分割協議を3年以内に終わらせる」旨を届け出ることで、遺産分割協議を行った後に、特例等を適用した正式な額を計算しなおして多く収めた分は還付してもらうことができるのですが、一時的に税額を負担する相続人がでてきてしまいます。この負担をする人や負担後の相続税の負担割合を相続人間で調整しようとするとこれまた手間になるでしょう。
ですので、相続税申告の期限である相続発生後10か月後までには遺産分割協議を完了しておいたほうがリスクを減らすことができますし、相続税申告自体もスムーズに進められます。
3、不動産が相続人間の共有名義になるため、管理や処分が困難になってしまう
故人の名義の不動産は、死後に相続人全員の「共有名義」になります。
遺産分割をせず、また不動産の名義変更(相続登記)も実施せず、「共有名義」のままにしておくと、不動産全体の売却や賃貸借をするにも、共有名義となる相続人全員から合意を得てからでないと実施できないことになります。
さらに、ずっと放置しておくと、「数次相続」が発生し、さらに複雑な状態になってしまいます。
「数次相続」とは、最初に亡くなった人の財産が適切に遺産分割を経て相続されないまま、相続人が亡くなり、最初に亡くなった人の財産を次に亡くなった相続人のさらに相続人に相続しなければならない状態のことを指します。
このような数次相続が起きるたびに当事者は増えていく可能性があります。実家の売却を考えたとき、共有状態では全員の同意を必要としますから、面識がない・連絡が取れないなど、スムーズに進まないことは容易に予測できるでしょう。そのため、遺産は放置せずに分割協議をするべきですし、協議ができないなら調停や審判を利用してでも遺産分割するべきです。
相続した不動産の登記が義務化されます
現在、所有者不明土地が社会問題化しています。この問題を解消するため、2024年4月1日から「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続した不動産の名義変更が義務化されることになります。
いままでは
- 不動産の価値が低い
- 相続人間で話し合いがまとまらない
- 相続人に行方不明(音信不通)の人がいる
など様々な理由で相続登記を放置していた人も多ったのですが、義務化後は、正当な理由が存在なければ、3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められる可能性があります。
法務省の法制審議会によれば、正当な理由が認められるケースは次の場合です。
不動産の遺産分割協議は難航するケースも珍しくないため、定められた期間内に登記できない可能性が高いかもしれません。もし現在、亡くなられたご先祖様のままで名義変えないままになっている土地をお持ちの方がおられたら、お早目に弁護士に相談いただくことがおすすめします。
遺産分割協議の段階で弁護士に交渉をご依頼いただくことで、比較的短期間で解決に進められる可能性が高まり、スムーズに話がまとまることが可能です。あなたの貴重な時間が奪われずに済み、またご家族・ご親族間の関係性も悪化させずに済むことが多いです。
4、遺産分割協議が長引き相続税申告が間に合わない
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10カ月以内となっています。
相続税申告が間に合わないと「加算税」「延滞税」などが課され、本来よりも多額の納税を強いられます。
また、相続税の申告のためには相続人の調査や相続財産の調査が必須です。戸籍謄本の収集・調査に加えて,不動産や預貯金,株式や保険等の調査をしなければなりません。
相続税の申告期間というタイムリミットがある中でこれらの作業をご自身で行うことは心理的にも時間的にも御負担となるかと思われます。
したがいまして,遺産分割を適切かつ迅速に行うことが,法的にも税務面においても,相続の手続を円滑に進める第一歩であり,そのためにも早期に,遺産分割手続に精通した弁護士に相談をすることが重要です。
遺産分割が進まない状況を解決するためには
上記のような不利益やトラブルのリスクを取り除くためにも、遺産分割は、早めに解決していくべきです。それでは、具体的に、どのように進めればよいのでしょうか。
遺産分割が進まない状況を解決するためには、相続に詳しい弁護士に相談して、どのような方針で進めていくのか、全体像を決定していくことが必要です。
特に、故人の死後、相続人が誰なのか、または相続財産が全部でどのくらいあるのか、全く把握されていないで放置している場合は、まず相続人の調査と相続財産の調査から依頼しましょう。調査の結果を踏まえて、その後の方針を検討することになります。
必要であれば、弁護士に遺産分割の交渉の代理を依頼することも可能ですし、揉め事の心配が全くなければ、遺産分割協議書の作成および相続人への押印依頼を実施し、早急に遺産分割協議書を提出できるよう手配いたします。
故人の死後、例えば「他の相続人と疎遠で、連絡を取るのが面倒である」「相続人が遠方に散らばってしまい、連絡が難しい」など、相続人との連絡が取れない場合や「遺産分割協議書案を作ってもらったが、他の相続人が納得せず、押印してもらえない」「以前の相続の際に変更されていないため、相続関係が複雑になっている」など遺産分割協議自体が滞ってしまっている場合は、弁護士があなたに代わって遺産分割協議の交渉の代理を実施します。どうしても話し合いに応じてくれない相続人がいる場合には、遺産分割調停を申し立てて、調停で解決を目指します。
あなたがお考えの遺産分割の内容で、またご希望になるべく添える形での解決を目指します。まずは、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。
遺産分割は早めに弁護士にご相談を
□不動産の価値が不動産を取得したい人の法定相続分を上回っているので、他の相続人が納得しない
□遺産分割協議書の作成や登記変更のための書類集めが大変である
□疎遠な相続人がいて話し合いが進まない
□不動産の登記名義が以前の相続の際に変更されておらず、相続関係が複雑になっている
□相続する不動産が共有である
こういったことでお悩みの方は、まずは弁護士に相続の相談をしていただくことをおすすめいたします。
相続問題の解決実績が豊富な弁護士が長期間放置していた相続の問題を解決に導くサポートをさせていただきます。
当事務所では相続に関する初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。
無料相談のお申し込みはお電話(022-308-8671)または問い合わせフォームより受け付けております。
当事務所によくお問い合わせいただく相談内容
この記事の監修者について
アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。022-398-8671