相続財産を取得する方法、手続きの方法

相続においては、「どの財産が分割の対象となるのか」「どのように分割すればいいのか」「評価方法に決まりはあるのか」「借金はどうすればいいのか」など、一般の方には馴染みが薄い問題が多数出てきます。

 

相続人全員が納得できる方法があれば良いのですが、基本的には、「誰かが得をする分、他の人が損をする」関係になりますので、家庭裁判所における遺産分割調停や審判の傾向を踏まえて、計算方法や分割方法を慎重に検討していくことが必要となります。

 

不動産(土地・建物など)

我が国の相続の特徴の1つに、「遺産の中で不動産が占める割合が高い」ことが挙げられます。

しかし、不動産は、相続の揉め事の原因となります。全く同じ価値の土地が2つあって、相続人が仲良く1つずつ取得できれば良いのですが、全く同一の土地は存在せず、同じように見える土地であっても評価は異なるのが普通です。

また、土地には「一物四価」といって、複数の基準価格が存在し、評価の方法によって、取得額が大きく変わる可能性があるため、どの基準を採用するかでも揉めることがあります。

①時価

実際に市場で売買される取引価格です

 

②公示価格(地価公示価格)

国土交通省が特定の標準地について毎年1月1日を基準日として公示される価格

一般の土地取引の指標とされます

 

③固定資産税評価額

固定資産税、不動産取得税等の基準となる価額。3年に1度評価替えが行われる。1月1日を基準として市町村が算定します。公示価格の7割程度を目処とされます。

 

④相続税評価額(路線価)

相続税、贈与税等の算出の基準として毎年1月1日時点を基準として、毎年、国税庁から公表される価格です(市街地的地域は路線価方式、市街化以外の地域は固定資産評価額に倍率を乗ずる倍率方式)。公示価格の8割程度を目処とされます。

 

⑤都道府県地価調査標準価格

都道府県知事が、特定の基準値について毎年7月1日を基準日として公表されている価格です。

 

なお、建物については、一般の住居(木造住宅)は固定資産評価額で決めることが多いです。建物は古くなるほど低くなり、あえて鑑定等をする費用や手間をかけることが困難な場合が多いです(時価は数十万円程度であったり、逆に土地売却の負債になるとして減額されることもあったりします)。

 

生命保険・株・投資信託

1)生命保険

死亡保険金の保険金請求権は、通常、遺産には含まれず、受取人の固有の権利と考えられています

・受取人が指定されている場合は、「受取人の固有の権利」

・受取人が被相続人自身となっている場合は、「相続人の固有の権利」。

・受取人が、先に他界していた場合は、「受取人の相続人の固有の権利」(保険法46条、75条)。

・なお、契約者・被保険者・受取人が被相続人となっている契約の場合で満期の後に相続が発生すれば、相続の対象となります

 

2)株

株は相続人全員の共有となり、遺産分割により、誰が何を取得するのかを決める必要があります。「売却して、売却金を分ける」という方法もありますが、売却しない場合には評価額が問題となります。上場株式の場合、株価の乱高下が激しいため、特定の時期の株価に固定する方法もあります。

 

3)投資信託

投資信託に関しては裁判での蓄積が少ないのですが、通常は遺産分割の対象となると解されます。

無用な混乱を避けるため、可能な限り、一商品を一人の相続人が取得することが望ましいと考えられています。

 

預貯金など

・預貯金は、故人名義のものが遺産の対象となります。

ただし、「本当は故人の資産だけど、他人(親族)の名義を借りて貯蓄をしている」というケースがあります(税務上は「名義預金」と呼ばれます)。

名義人が「これは確かに故人のものです」と認めてくれればいいのですが、そうでない場合(例:故人からもらったものだ[※名義人が相続人であれば特別受益の問題となる]、介護のお礼だ)は厄介です。

この場合、相続人が名義人に対して訴訟を提起し、裁判所に名義預金だと認めてもらう必要があります。

 

その他(宝飾品・車など)

動産は、多くが中古品で価値が低いため、遺産分割という形を取らずに事実上「形見分け」とされることが多いですが、宝飾品や美術品の場合は、評価方法・評価額が問題となります。

また、故人と同居していた相続人の一人が、動産の一覧を開示しなかったり、他の相続人が把握していた動産が無くなっていたりすることで紛争化することがあります。

車の場合は、通常、遺産分割の対象となりますので、誰が相続するのかを協議し、名義変更手続きをします。

他方で、所有者がクレジット会社やディーラーのままの場合(ローン支払い中)、被相続人の所有物ではないので、相続財産ではありません。業者に連絡をして、引き上げられて、相続人は残ローンを支払うことになります。

 

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この記事の監修者について

アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)  

専門分野

相続遺言、交通事故

経歴

秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
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