特定の相続人に、遺留分すら残したくない場合
遺留分の支払いから逃れるためには
仲違いした相続人に遺留分も残したくないという願望は誰にでもあることです。
しかし、遺留分は兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された権利であり、遺言書よりも優先されるものであり、遺言者だけで遺留分を消すことはできません。
当該相続人の方に遺留分の請求を断念・放棄していただくことが必要です。
一番、簡易な方法としては、遺留分の請求は権利者の自由ですから、時効期間(遺留分侵害の事実を知ってから1年)の間に、遺留分の請求を控えていただくことです。
実際に、遺留分侵害のある遺言書があっても、遺留分の請求をしない方は、それなりにいらっしゃいます(弊所へのご相談でも、遺留分侵害の事実は認められるものの、予想される金額と相手の資力や手続費用を鑑みて、請求をしない、という選択をされる方は一定数いらっしゃいます)。
ただし、何も対策をしなくて、相続開始後の相手の意向に委ねる、ということでは不安が解消されません。そのため、遺留分の請求を断念してもらうための方法を考えましょう。
遺留分の請求を断念してもらうためには
実は、相続人は遺留分(財産)が欲しいというよりも、平等に扱ってもらえないことにわだかまりを持っているケースが多いです。
そのため、遺留分も渡せない理由をしっかり説明をして、遺留分の代替案が用意することが大切となります。
一例としては、当該相続人に既に多額の学費や援助を行っている事実であったり(特別受益に該当する、しないに関わらず)、長男に老後の介護を全て見てもらうので、当該相続人には負担をかけないことであったり、生命保険の受取人に指定しておくことが考えられます(※ただし、生命保険は、法律上は、遺留分を補填するものではないので、多額の生命保険を与えたものの、遺留分の請求を防げない場合があることは要注意です)。
さらに、「長男に事業を継がせたい。今の財産は事業の運転資金のための必要であり分散させることができない」など、理由や必要性について、しっかりと相続人に話をするということが大事です。
家庭裁判所の許可があれば、相続の開始前であれば遺留分を放棄することができます(相続開始後は、家庭裁判所の許可はいらず、本人の自由意思で放棄できます)。
①当該推定相続人の自由意思に基づくこと
②放棄理由に合理性・必要性があること
③放棄の代償があること
端的にいえば、既に、遺留分に相当する利益を得ているか否かが重要となります。
そもそも遺留分がなくなる場合
法律上、遺留分が生じない制度があります。それが、「相続欠格」と「相続排除」です。
「相続欠格」は、親を殺害した子させたり、親を脅して遺言書を書かせたり、遺言書を隠したりする場合です。当事者が欠格を認めることは考えがたいので(認めるのであれば「相続欠格証明書」を作成します)、通常は、裁判において、相続権の存否が争われます。
「相続廃除」は、本人の生前中にもできる制度です。推定相続人に「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」があった場合、家庭裁判所の審判で、相続人資格を喪失させることができます。通常は、遺言書で、相続人の排除を記すことが多いと思われます。その場合は、遺言執行者が家庭裁判所に審判をも空いたてます。
ただし、いずれの場合も、当該相続人が、先になくなり、その子供がいる場合は、代襲相続は発生するとされています。
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この記事の監修者について
アイリス仙台法律事務所 代表弁護士 関野純 (仙台弁護士会所属 登録番号35409号)専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。022-398-8671