遺産分割調停と審判
・主張が対立してどうしても遺産分割協議がまとまらない
・話合いが堂々めぐりで一向に進まない
・相続人の一部が、話し合いにすら応じてくれない
このように相続人間の協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討します。
早期に調停を申し立てるべきか、なお交渉を続けるべきか、判断が難しい場合もございますので、ご不安な場合は弁護士にご相談ください。
弁護士は、調停となった場合の進行、時間、解決の見通しを踏まえて、方針のアドバイスをいたします。
逆に、他の相続人から突然、調停を申し立てられることがあります。
いきなり調停を申し立てられた場合、どのように対応すれば良いか戸惑われると思います。そのような場合も、落ち着いて、まずは弁護士にご相談ください。
次に、遺産分割調停と審判について、ご説明いたします。
遺産分割調停とは
遺産分割調停は、相続人の1人又は複数人が、他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に申し立てることで始まります。
調停では、裁判所が選任する「調停委員」を仲介者として、申立人と相手方は、別室で待機し、交互に調停委員と話をする形で、協議が進められます。概ね月1回の頻度で行われます。
調停委員は仲介者として、遺産分割がまとまるように、関係者の利害を調整したり、必要な資料の提出を求めたりします。
調停で話し合いがまとまれば、裁判所は、合意内容を記載した「調停調書」を作成・発行してくれます。各相続人は、「調停調書」にもとづいて相続手続きを行うことができます。
調停のポイント
調停を有利に進めるためには、調停委員に自分たちの主張を理解・納得してもらうことが肝要です。
そのためには、できるだけ証拠を集めて、主張を組み立てることが重要になります。また、審判に移行したことも含めて想定することが重要です。
調停に臨むにあたっては、弁護士に事前にアドバイスを受けるか、代理人活動を依頼し、調停に出席(同席)してもらうのが良いでしょう。
特に、相手が弁護士をつけてきた場合には、「プロ対素人」の構図になってしまい、不利に流れることが多いので、あなたも弁護士をつけることをお勧めします。
遺産分割調停を弁護士を依頼する理由や利点(メリット)
「調停は弁護士を付けなくても大丈夫」と言われていた時代もあったようですが、現在の遺産分割調停は、複雑な法律問題がかなり多く含まれており、その判断は、法律家であっても簡単ではありません。
調停は、当事者全員が納得すれば、どんな形でも成立はいたしますが、もしかすると、あなたが「仕方ない」と思って応じた内容が、弁護士を付けることで、違う結論になったかもしれませんし、調停委員を説得することができたかもしれません。
調停を有利に進行するため、調停委員に納得してもらえるように、証拠を提出し、主張を組み立てる、ことが重要になりますが、主張の組み立て、証拠の提出は、弁護士でなければ熟知することができませんので、よほどの事情がなければ、調停において弁護士を依頼することが良いと思います。
相手が弁護士を付けているのに、自分は付けない、というのは非常に不利な立場を覚悟しなければなりませんし、逆に、相手が弁護士を付けていないが、自分が弁護士を付けている、というのは、遺産分割調停を有利に進められる可能性が高くなります。
1 時間的猶予の短さ
調停は1ヶ月に1回を目安に開催されます。次の調停まで1ヶ月、というのは長いように見えて、準備期間としては必ずしも十分ではありません。短時間で、適切にご自分の主張を裁判所に訴えるため、弁護士は、迅速かつ適切に事案・状況を把握し、必要な対応を行うことができます。
2 法的知識と経験
裁判所における手続きは、専門的な法律知識と経験が求められますが、弁護士は、依頼者の権利を守り、最適な解決策を見つけるために、法的知識と経験を駆使します。
3 書類作成の専門性
裁判所に提出する書類は、内容の正確性と定められた形式で作成する必要があります。
内容や形式に不備があると、信用性が低下したり、主張を正しく理解してもらえない可能性がありますが、弁護士は、裁判所が求める内容と形式で、依頼者の主張を的確に伝えることができる書類を作成します。
4 精神的負担の軽減
裁判所から書類が届くと、強い不安やストレスを感じますが、弁護士に依頼することで、書類は一旦、弁護士宛に届くようになります。そして、弁護士が内容を確認した上で、依頼者に報告しますので、精神的な負担が軽減され、安心して手続きに臨むことができるようになります。
5 不利益な結果の回避
対応すべき点を放置したり、誤ったりすると、最終的に不利な判断がくだされることにつながりますが、弁護士は、依頼者が予期せぬ不利益な結果を回避できるよう、適切な対応を行います。
遺産分割審判とは
調停が合意できないと審判に進展する
遺産分割調停では、全ての相続人が納得せず、調停での解決が見込めないと判断される場合、調停は不成立(不調)となり、自動的に審判手続きに移行します。
なお、近年では、遺産分割調停事件全体のうち10%程度が調停で不成立となり、審判手続きに進んでいるようです(寄与分が問題となっている事件では調停不成立の割合が30%を越えているようです)。
10%と聞くと、意外と少ないようにも思えますが、逆にいえば、審判に進む事件というのは、当事者全員が納得する(和解)解決が極めて困難であるともいえます。
調停と審判の違い
遺産分割調停では、調停委員が双方の主張を聞き、調停が成立できるように、相続人間で合意形成をするためのサポートを進め、調停が成立すると調停調書が作成されます。
遺産分割審判では、裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、判断を下します。
審判で下された判断は法的強制力をもち、判決内容には原則従わなければなりません(不服であれば、高等裁判所への即時抗告が可能です)。
審判終了後の流れ
審判の判断の流れに従い、相続手続きが進められます。
具体的には、預貯金の解約手続、不動産がある場合は不動産の名義変更手続、財産の分配作業等があります。これらの相続手続を怠ると、後々の相続手続、特にあなたの死後や共同相続人の死後の遺産分割で非常に苦労することになりますので、確実に進める必要があります。
もし審判に不服がある場合は、2週間以内に「即時抗告」する必要があります。なお、即時抗告ができる事件は法律によって決まっており、その内容を作っていくには法的な専門知識が必要になるため、できるだけご本人ではなく、法律の専門家に依頼したほうが良いことが多いです。
遺産分割調停や審判については、馴染みがなく不明な点も多いと思いますので、一人で悩まずに弁護士にご相談されることをお勧めします。
遺産分割と裁判
相続(遺産分割)で揉めたら、多くの方は、家庭裁判所の「遺産分割調停(審判)」で問題を解決する、ということはご理解いただいております。
しかし、相続問題であっても、家庭裁判所で解決できる問題と、そうでない問題があることはあまり知られておりません。
実は、家庭裁判所が終局的に判断できることは、「死亡時にあって、遺産分割時にも存在する遺産」の分割についてであり、それ以外については、原則として、判断ができない、という立て付けになっています。
具体的に、遺産分割に関連する問題として、
「遺言の有効・無効」
「生前の使い込み」
「死後の引出し」
「・・が遺産に含まれるか否か」
などがありますが、これらは、相続人全員の合意がなければ、家庭裁判所は、考慮しません。
その結果、全ての問題が解決するわけではないので、残された問題は、別に、地方裁判所に訴訟提起をすることになります。
実際に、いざ、遺産分割調停が始まってから、「あの遺言はおかしい」「使い込みがある」「・・も遺産に含まれるはずだ」という主張をした場合には、必ず、裁判所(調停委員)からは、「それは、訴訟で解決すべき問題ですので、訴訟の結果が出ないと、遺産分割を進めることができません」と言われてしまうことになります。
それは、仮に、家庭裁判所で、遺産分割の判断を下したとしても、その後に、地方裁判所で、基となった遺言の有効性が引っくり返されれば、遺産分割をやり直す必要があるからです(つまり、まず、解決すべきは、遺産分割の前提問題から、ということになります)。
相続に絡む訴訟として類型的に多いのは、
①遺産確認の訴え(被相続人の名義ではないが遺産に含まれる、と訴える訴訟)
②不当利得返還請求(生前に遺産の使い込みがあったとして、相続人の一人を訴える訴訟) ③遺言無効確認の訴え(遺言の要件不備、本人の意思に基づかないので無効だと訴える訴訟) があります。 |
この他にも、遺産分割で、ある不動産が、相続人の共有にすべきと判断された場合には、地方裁判所で、「共有物分割請求訴訟」をする場合もあります。
なお、前提問題に争いがあるとしても、結果に与える影響が少ない場合には、思い切って、その点はカットして、残りの遺産の分割に焦点を当てるほうが良いケースもあるでしょう。
訴訟になった場合、弁護士に依頼をしないというのはかなり不利な立場になります。
単に遺産の分け方だけが問題ということでなければ、手続面も含めて、相続問題に詳しい弁護士に相談して、早い段階で見通しを組み立てたほうが、結果的に、良いことが多いと思います。
当事務所のサポート内容
当事務所では遺産分割が進まない、まとまる気がしない、とお悩みの方に、弁護士より最適なサポートを提供させていただいております。
初回60分無料相談
当事務所では、相続の相談について、初回60分を無料とさせていただいております。
遺産分割について、あなたの不安点を親身にヒアリングさせていただき、弁護士が相続の不安点を解消できるように、ご提案させていただきます。
気になることや不安なことがあれば、ささいなことでもお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者について
専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。022-398-8671