【解決事例3】相続手続きを行わなかったため、相続人が増えてしまった事例
【解決事例3】(相続手続きを行わなかったため、相続人が増えてしまった事例)
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依頼背景
両親が他界しましたが、特に名義変更をする必要性・緊急性がなかったため、誰も積極的に遺産相続を言い出さない間に、次男が他界しました。
次男に妻子がいなければ、次男の相続分は、他の兄弟が譲り受けますが、次男に妻子がいた場合、次男の相続分は次男の相続人である妻子が譲り受けますので、次男の妻子も遺産相続手続きに加わることになります(このような状態を「数次相続」といいます)。
問題は、他の相続人と次男の妻との関係が険悪であったということです。全く話し合いにならないため、長男や長女(Cさんら)が弁護士にご相談にいらっしゃいました。
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弁護士の関わり
遺言書がないことと、Cさんらが遺産を必要としていなかったことから、法定相続分を基準として遺産相続を進めることには異存がありませんでした。
しかし、全く信頼関係がないため、Cさんらは、自分たちだけで手続きを進めることに強い不安があったため、第三者の明確な関与があるほうが望ましいと考え、受任後、速やかに家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
Cさんらの不安は残念ながら的中し、相手は、主張や希望を二転三転させ、調停は遅々として進みませんでしたが、調停委員の積極的な後押しもあり、最終的には調停でまとまりました。
なお、調停の成立の見込みがないと判断された場合には、調停は打ち切り、裁判所が遺産相続の内容を決定する「審判」手続きに移行するという方針もありえます。
しかし、遺産が複数ある場合や不動産の場合、「審判」では、法定相続分の割合で「共有」にしなさい、という判断しかされないおそれがあります。
これでは紛争の最終解決にはならず、「共有」状態を解消するため、別に訴訟手続きを踏まなければなりません(市民感覚としては理解しかねる部分かと思います)。
本件では、預金のほかに実家不動産と農地がありましたので、これが「共有」となるのはなんとしても避けたい結論でした。
そのため、粘り強く調停委員に過去のいきさつ等を説明した上で、利用頻度の低い農地を相手が相続し、Cさんらが預金を多く相続する内容で調停が成立しました。
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担当弁護士の所感、事件解決のポイント
相続手続きを保留したままにすると、相続人が雪だるま式に増え、円満な遺産相続が困難になっていきます。本件でも、兄弟同士であれば円満な解決が可能だったかもしれません。
遺産相続は早期に解決を図ることが、最も負担が少ない選択です。できれば、ご自身の代で解決していただきたいと思います。

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この記事の監修者について

専門分野
相続遺言、交通事故経歴
秋田県出身。千葉大学卒。2005年に司法試験に合格。司法修習を経て、2007年に仙台弁護士会の弁護士に登録。仙台市内の法律事務所に勤務後、2011年に事務所(現・アイリス仙台法律事務所)を開設。直後に東日本大震災が発生し、事務所は一時休業になるも、再開後は被災者の再建支援、相続問題や不動産の賃貸借トラブルを多く依頼される。 現在は弁護士2名、スタッフ3名の事務所の代表弁護士として活動している。また、仙台市内で相続問題や家族信託に関するセミナーの開催や相談会の開催など、地域の高齢者問題に積極的に取り組む。
022-398-8671
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